合成ゴムローラーの表面は、何10億個もの非常に細かい孔で格子状になっています。インキローラーは互いに回転し、接している所では圧縮されているので、これらの孔はインキを一連のインキローラーから版面へと送り続けるポンプの役割を果たします。
 乾いたインキ;用紙のコーティング材;アラビアゴム;湿し水の薬品、そしてゴミなどの非常に細かい物質が積み重なってローラーの孔が詰まった時に、ローラーはグレーズを起こします。そうするとポンプは停止し、インキはうまく転移しません。もし孔を詰まらせている物質が、親油性ではなく親水性であると、ローラーの表面は水を呼び寄せ始めます。そしてインキはローラーからはぎ取られ、インキ着けローラーにインキが少なくなり、印刷がかすれて不均一になります。ここまでくると、良好な印刷は困難になりますので、印刷機を止めてローラーのグレーズを落とさなければなりません。
 グレーズを落とすためには、表面のインキを洗い流すために作られた溶剤であるローラー洗浄液を使えばいいと言うものではありません。グレーズを落とすということは、ローラーの孔が再び有効なインキポンプとして働くことが出来るように、その孔の内部まできれいにすることなのです。
 内部まできれいにするために、強力な溶剤や研磨剤を使うといった方法もとられています。この方法によって、良い結果が得られることもありますが、ローラーを痛めその寿命を短くし、印刷室内に強烈な溶剤の臭いが充満するといった危険もあります。ですから、グレーズリムーバーとしては臭いが弱く、不燃性又は高引火点で、無害な製品がよいでしょう。
 ピンクマスターを使って印刷していると、特にものすごいグレーズを引き起こすことがあります。ピンクマスターでのグレーズは、ピンクマスター用の湿し水に含まれる薬品の、非常に細かい結晶の形成によって起こります。この結晶は大部分のグレーズリムーバーに使われている溶剤にはまったく溶けません。しかし、水には溶けます。ですから、ピンクマスターによるグレーズを落とすには、水で洗い流すタイプの洗浄液を使うといいでしょう。
 もう一つ忘れてはならない大事なことは、ブランケットもグレーズを起こしますので、ブランケットにもインキローラーに対するような、きめ細かな注意を払わなければならないということです。そしてブランケットを何枚か用意して、ある一定期間使用したら取り替え、ブランケットを休ませながら使えば、その寿命も延び印刷品質も良くなるでしょう。