コート紙やアート紙への印刷のことを考えると頭が痛い、とおっしゃる印刷者の方々が時々いらっしゃいます。しかし、私達には、このことがそれほど頭を痛める問題には思えません。というのは、特別な用紙を除けば同じ印刷者の方が、毎日印刷している上質紙と全く同じように、印刷が簡単だからです。
 確かにコート紙は上質紙よりも重く、裏移りやチョーキング等を引き起こすような、平滑な表面をしているのは事実です。しかし、表面が平滑なので、コート紙は上質紙ほどインキを必要としませんし、オフセット印刷の場合には水の量も少なくてすみます。初めてコート紙に印刷する時は、良い仕事をしようと思うせいか、インキを多く出しすぎ、結果的により多くの水が必要となってしまいます。しかし、良い印刷物を作るためには、逆にインキを絞り、水も絞るべきなのです。
 コート紙のような表面の平滑な用紙には、単位面積当たり多くの気孔があるのは事実ですが、表面のコーティング層がインキや水を、すぐに吸収するわけではありません。インキが多すぎたりして、吸収作用が不充分だと、表面のインキが次の用紙の裏につくことになります。逆にインキの吸収がよすぎたりすると、チョーキングの状態が起こるかもしれません。こうなると、一見インキは乾いたように見えますが、顔料はすぐに表面からこすり取られてしまいます。これは、インキのビヒクルが気孔の中に引き込まれてしまうのに、顔料は気孔の中まで浸入できず、ビヒクルから離れて用紙の表面に付着しているだけの状態になるために、起こります。
 適切なインキ皮膜が印刷されれば、ビヒクルだけが吸収されてしまうことはなく、顔料・ビヒクルのどちらも、表面に良好な状態で付着しています。

 コート紙へ印刷する時には、次の点に注意して下さい。
  1. インキは必要最小限まで減らす。
  2. オフセット印刷の場合には、水も必要最小限に減らす。
  3. 良質の印刷物に仕上げるには、硬めの胴仕立てにして印圧やローラー圧を軽くする。オフセット印刷の場合には、ブランケットと圧胴間の圧力も出来るだけ軽くする。こうすれば、ブランケットに紙が巻き付くのも防げるでしょう。